夏石鈴子

 夜の駅のホームに立つと、 「あーあ、これで今日一日も終ってしまう」  と、なんだか無念のような名残り惜しいような気がする。私の脇を電車が走って、ずっと先のトンネルに入るところを見ているのは、砂時計の砂が、最後にすうっと落ちてなにもなくなる瞬間と、よく似ている。 「これで終り? 本当に終り? 何も起らなかったのに」  もう見えない電車を見続けて、わたしはまだそう思っているのだ。